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by psychiatrist / contributor for Cookie Scene music journalism publication since 1997 to2009. web magazine launched in 2010.

REVIEW ミツメ mitsume / 『うつろ uturo 』

ミツメ / うつろ

mitsume http://soundcloud.com/mitsume

  ミツメのボーカル、ソング・ライターの川辺素君。彼は以前、幼い頃の夏の思い出について書いていた。彼のプライベート・ブログで。少し寂しくて、でもなじみやすく、すうっと心に入ってくる。読後感が暖かい。

 今回のEP『うつろ』の4曲を聴いても同じ印象を受けた。誰にでも受け入れられる心象風景ではない。けれど私には安心できる。少なくない彼や彼女がそう思うはずだ。

  こちらのOTOTOY配信における竹島絵奈さんのレビューに各曲の印象が詳しい。彼女はネオ・アコースティック、サイケデリックという昨今のUKや日本のインディー・シーンのキーワードを用いている。思うにミツメほど、この2つの言葉の深い意味を表している東京のバンドはいないのではないか。

  ネオ・アコースティックとはパンク、ニュー・ウェイヴ以後の世界で、70年代以前のロックが持っていた繊細なギターの響きを復権させ再解釈する試みだ。サイケデリックとは「精神+拡張」を意味する造語。夢と現実が入り混じり気持ちよく世界が拡張する曲感はまさにだ。ジャケットのミラー・ボールの回転もその勢いを加速させる。でもあくまでゆるやかに、しかし確実に。

  移り行く世界で正確にステップを踏むことは、過去に倣い、しかしそれを超えた着地点にある。竹島さんの書かれた様に彼らは一貫して素朴で暖かな曲調を好む。そこにノスタルジーをひとさじ。時にシンセでワン・クッション。例えばレディオヘッドがいかにメジャー・キーで作曲してもひとたびトム・ヨークが歌えばダウナーな雰囲気になるように、川辺君が歌えば穏やかさの中に「虚ろ」が覗く。そこにあらがいようもなく惹かれる。

 

by Toyokazu Mori(森豊和) mail sync4@i.softbank.jp 

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