sync4

by psychiatrist / contributor for Cookie Scene music journalism publication since 1997 to2009. web magazine launched in 2010.

実存的苦痛

 その人がその人であるということは、いったいどういうことでしょう。生きてきた証を積み上げることは、高齢になるにつれ、ますます重要になります。若者には未来がある。いくらでも理想を描くことができる。一方で50代以降、しだいに人は損なわれていく。その途上で癌、もしくは大病に罹患することは、それ以前に経験された喪失に新たな巨大な喪失を重ねることになる。

 すると実存的苦痛が頭をもたげる。すなわち
1.(これまで築いてきた)関係性の喪失。
2.(自分の意思によってものごとを成し遂げられるという)自律性の喪失。
3.(過去から現在、未来に渡って自身が存在し他者と影響しあうという)時間性の喪失。


 その人なりの方法で喪失を受容しなければならない。あたかも鏡に映った自分をなぐさめるように自分で自分を利しえたら、その人はきっと聖人でしょう。しかし当たり前ですが、たいていの人は今までより一層他者を必要とします。

 誰かに関心を寄せてほしい。、病気とその影響について感情表出して聴いてもらいたい。そばにいて保証してもらいたい。現実的な範囲でかまわない。それしか得られない。個人対個人として真剣に向かい合い私を尊重してほしい。他者を通して自己を確かめたい

 これまでの人生を回想していきその誇りの部分をすくい上げる。人生で最も意味があったこと、個人的記録の中で誰かに覚えておいてもらいたいことなどを。自分の考えや思いは今後も受け継がれる価値があるものであることを確認できたら。だからこそある人は文章を書き、ある人は曲をしたため、ある人は形あるものを作るのでしょう。

 

 

  by Toyokazu Mori (森豊和) mail sync4@i.softbank.jp

Remove all ads